【19.07.19.】『少年と神隠し』感想
大ヒットBL作『玉響』(大洋図書・刊)から約5年――
ゆき林檎の真骨頂となる和ノスタルジックな最新作が登場!
(amazon.co.jp「内容紹介」より)
【ここから感想です】
『玉響』でゆき林檎さんを知って作家さん買いをする気満々だったのに、見落としていました。
衝動的に電子で購入、あとで紙本を買い直そうと即決したくらいに好きな作風のお話でした。
『玉響』を拝読したときも思ったのですが、ジャンルとしてBLではありますが、同性愛か異性愛か、ということや、年齢差や身分差などのあらゆる“違い”を度外視して魂が惹かれ合うがための切ない物語、という作風です。
でも、『玉響』と同じく、この作品も、切なくも救いを感じさせてくれるラストなので、「限られた時間を精いっぱい幸せにね」と応援したくなる終わり方でした。
時代は昭和28年、霊感が強い修一郎は生まれて間もなく神社に捨てられていて、拾ってくれたおばあさんを亡くし…というエピソードから始まります。
育った村を離れることにした修一郎は、山中で性質の悪い霊的な何かに襲われそうになり、怪我をして逃げる中で倒れてしまいます。
そんな彼を助けてくれたのが、正体不明の山伏の恰好をした青年、テン。
彼もまたとある理由から独りぼっちで過ごしていましたが、修一郎と暮らす中で、実は修一郎と縁の深い人だと分かっていくのですが、その関係性がとても切なく、またお互いが一途すぎるくらい一途で誠実だからこそ、その先を考えると、どうしても2人の「期限」というものをこちらが意識してしまい、2人の関係が分かったときはメチャクチャ切ない気分で続きを読み進めていました。
でも、その切なさは作中ではとても慎ましくて、だからこそ今を大切に一生懸命、そしてお互いとともに生きていく、という書き下ろしのお話がとても慰められ、穏やかで温かな気持ちで読み終えさせてくれました。
蛇足ですが、恋敵が自分というのも、なんとも切ないというか、どうしようもないよなあ、という切なさが漂うお話でもあります。
この辺りの、テンの視点のお話も読んでみたいな、なんて思わせるお話でした。