本と映画と日常と

自分が読んだ本、鑑賞した映画と日常の徒然を書き留める備忘録ブログです。感想記事にはネタバレもありますので、各自の判断と責任のもと閲覧くださいませ。

【20.12.08.】『群青にサイレン(12)』感想

 

群青にサイレン 12 (マーガレットコミックスDIGITAL)
あらすじ:
転入生の井上は、小学生時代に角ケ谷(つのがや)を虐めていた張本人だった。
友達の最低な過去を知った空。
泣いている親友の元へ走る修二…。
痛みを知り、もがき苦しみ抜いて出した球児たちの答えとは?
遂に、最後のサイレンが鳴り響く…!

 

【ここから感想です】

 

まだまだ続いてくれると疑ってみたことすらばかったこの作品、新刊の通知を見て即ポチリ、読了後、ショックのあまりレビューができませんでした…まさかの完結巻…。

漠然とですが、この物語は修二だけでなく、空の成長、そして後半辺りからは角ヶ谷くんも重要な人物となってきたので、読者は彼ら3人の成長を見届けて終わる=3年の甲子園でエンドマークがつくと思っていました。

勝手な憶測ですが…大人の事情、なのでしょうか…とても、とてもとても残念です。

とは言え、限られたページ数の中で、見事に彼らの成長を描いてくれていて、特に前半は例えでなく泣けてしまい、途中で読むのをやめざるを得なくなるくらいでした。
日を空けて、1巻から読み直しました。
角ヶ谷くんが修二に声を掛けた当初の話を読んだときに感じるものが、12巻の前半を読んだ後と当時とでは雲泥の差で重くのしかかってきて、また途中で読書を諦めざるを得なくなった、という体たらく。
井上くんと角ヶ谷くんの確執は、本当はここで終わる話ではなかったのでは、と読む側に思わせるほど尺が足りなかった…作者さんのあれやこれやが原因ではなく、多分「大人の事情」で…と思いたい自分がいるくらい、そこもこの物語のテーマの1つだろうと考えてしまうエピソードでした。
3年になった角ヶ谷くんと、マネージャーを経て、再び角ヶ谷くんと一緒にマウンドに立つ井上くんが見たかったです…。

なんとなく、なし崩しに和解した雰囲気だった修二と空の関係も、作者の桃栗みかんさんは、もっともっと描きたいことがあったのだろうと思わせる会話のやり取りが随所に見受けられて、(憶測でしかありませんが)「大人の事情」を恨めしく思ってしまいました…自分の憶測で勝手に悔しがっているのもどうかと思いますが、それくらい、読み手は空の心の動きや、修二がその決断に至るまでの葛藤や苦悩があったはずと思わせる性急さでラストまで持っていかれてしまい、本当はそんな簡単なことではなかったであろう修二と空のこれまでの語られていないけれど「こうじゃないか」とこちらに思わせてくれていたあれやこれやが報われていない気がして、悔しいことこの上なかったです。

でも、その分、短い言葉のひとつひとつに、エピソードとしては盛り込めなかった多くの想いを詰め込んでくれているように見え、作者さんのその手腕に感謝と尊敬しかありません。

任命当初は心許ない印象だったキャプテンがめちゃくちゃ光っている巻でもありました。
修二と空が、自分の事しか見えていないところから、ここまで来たのか…と、気分は母親感覚で読み終えました。
角ヶ谷くんを初めて年齢相応の男の子に見えたのも、感無量でした…最後にお母さんがやっと分かってくれて、本当によかった…。
そして角ヶ谷くんが少しでも野球そのものに楽しさを感じてくれているのが分かって、ほっとしました。

もっともっと、ずっとずっと、彼らが3年になり、丈陽と甲子園の出場権を奪い合うところまで見届けたかったです。
勝っても負けても、鈴木先輩や金子先輩、丈陽の守屋先輩に「おまえら全員、よくやった!」と、修二たちを褒めてもらいたかったです。
ここで完結してしまうのがこんなに惜しい作品はない、と悔しさ半分、でも、修二と空が野球を始めるきっかけになった「楽しい」を取り戻してプレイできる日が訪れたというカタルシスをくださったことに感謝の気持ちが半分、そんな素晴らしい作品でした。
やっとレビューが書ける程度に気持ちが落ち着いたので、また1巻から読み返します。
感動をありがとうございました。