本と映画と日常と

自分が読んだ本、鑑賞した映画と日常の徒然を書き留める備忘録ブログです。感想記事にはネタバレもありますので、各自の判断と責任のもと閲覧くださいませ。

【14.04.18.】『LEON』鑑賞

レオン 完全版 [Blu-ray]

レオン 完全版 [Blu-ray]

  • 発売日: 2013/04/19
  • メディア: Blu-ray
 

あらすじ:
 受けた仕事は完ぺきにこなすニューヨークの殺し屋、レオン。
 その無口な男へ、悪徳警官に家族を殺された12歳の少女マチルダが助けを求めてきた。
 復しゅうを誓う少女と、彼女を守る殺し屋。
 そこに「凶暴な純愛」が生まれた。
 若者から圧倒的な支持を受けるリュック・ベッソン監督。
 そのベッソンのハリウッド進出第1弾として公開された『レオン』には、監督が本当に描きたかったもう1つのバージョンがあった。
 本作はベッソンの強い意志により、彼自身の編集で22分間の未公開シーンを加えた完全版。
 スナイパーとして実戦に出るマチルダナタリー・ポートマン)と、しだいに重い心の扉を開いていくレオン(ジャン・レノ)。
 そして、殺し屋レオンが誕生した、その意外な過去も明らかになる。
Amazonレビューより)





【ここから感想です☆】

 


 実は気づいていませんでしたが、完全版を見てなかった...今回初の鑑賞です。

 この作品ほど何度も見てしまう作品はありません。
 ですが、毎回鑑賞するたびに新しい発見があったり、いろんな登場人物の視点で見たり。
 登場人物一人一人の個性がある、というか、生い立ち・背景にまで思い及んでしまうほど、人間くさい人がたくさん登場する。
 でも、最後は必ず号泣しながら見終わる、と(苦笑)
 完全版では、追加された22分がものすごく貴重、と思いました。
 これまで、レオンの過去に触れられることのない作品だったわけですが、未公開だったそれが盛り込まれたことで、彼がマチルダと出逢うまでは人をモノにしか見えないおっさんだったと思っていた私にとっては、ものすごくレオンに対するキャラクター像がひっくり返されるほどのエピソードでした。
 より愛しくなりましたね…ぶきっちょな少年みたいなおじさん、好き過ぎる…ッ。

 wikiで調べてみたら、未公開とされた理由がヒドイものでした...

 事前の試写会にかけた際、マチルダを実際の現場まで連れて行って暗殺の訓練をするシーンや、大人の男性と幼い少女が愛の言葉を交わしたとか、観衆の一部から「刺激的すぎる」「不健全である」との声があったため、やむ無く問題シーンをカット
wikipediaレオン(映画)』より引用)

 wikiにあるとおり、まさに「不完全」で公開されていたのだな、と。
 平凡で健全で「明日をも知れない命」という環境におかれたことのないキレイごとでは、彼らの繋がりや掃除屋として生きる過酷さや、常識がどれだけ彼らを守ってはくれないのか、という残酷な事実を鑑賞する者に印象付けることは難しいんじゃないか、と思います。
 改めて、完全版を見ることが出来てよかったと思います。
 年ばかり重ねたけれど、不器用な少年みたいなレオンと、生き抜くための処世術として大人顔負けの駆け引きスキルを持つ大人びた少女、マチルダ
 この二人の年の差の純愛は、完全版で初めてまるっと受け入れられる、という気がしました。
 不完全版のときは、二人の関係をどう言葉に置き換えてよいのか解らない、どこかもやっとしたものがあったのは否めません。
 特に、レオンはマチルダをどのように愛していたのかな、と...
 マチルダにしても、憧れと恋を勘違いしていただけなのか、そうじゃないのか、そのあたりがもやっとしていたんですね。
 完全版でようやく補完されて、また泣けました…。

 メンズスキーなので、大概にしろ、と自分でも思うくらい、男性キャラにばかり意識が向いた見方をしていたと思います。<若いころ
 今回は、どうしてかな…すっごく、マチルダの可愛さ一途さ健気さに身悶えました…っ。
 完全版効果、なのだろうか…彼女のまっすぐさは、レオンでなくてもコロっといきますね!笑
 あと、マチルダの弟くんの存在は何度見ても忘れていた模様…。
 彼を思ってマチルダが泣くシーン、危険を冒してまで家族が殺された自宅へ戻り、弟との思い出の品であろうぬいぐるみを持ち出して抱きしめるシーンは、例えでなく涙腺が緩みました…。
 レオンに大人の女性として認められようと、一生懸命背伸びする。
 お酒を一気飲みしたり、狙撃のレクチャーをしてもらう代わりに読み書きを教えてあげたり、対等であろうと必死な様は、もうハグしたくなる可愛さです。///
 捕えられたマチルダをレオンが助けに来た瞬間、彼女は駆け寄って思い切り彼に抱きつきます。
 そのシーンのアングルが、すごく切なく、かつほっとしたというか…。
 表情は一切映されません。
 レオンに抱き上げられて、彼の膝辺りにつま先が来てしまうくらい小さなマチルダの背。
 彼女のつま先がピンと伸びて、床へ足をつきたがる、けれど、つかない――どうしても埋められない年齢差をもどかしく思う彼女の心情を感じました。

 そしてマチルダ弟くんと対照的に、見るたびに強烈な印象を残してゆく、ゲイリー・オールドマン扮するスタンフィールド捜査官、実は麻薬組織のラスボス。
 薬がキマった瞬間のあの所作は、なんとも言えないくらいこちらをゾッとさせます。あの人、ホント天才だ…。
(G・オールドマン、めっちゃ好き)
 あの人は、捜査官でありながらなぜそうなったのか。
 世の理不尽、残酷な現実、正義を謳ったところで現実は所詮こんなもの――とか、思うような世界を、あのポジションだからこそ見えてしまったのかな、などと色々想像しました。
 若いころは本当に憎たらしい想いで受け止めていたスタンフィールドだったのだけど、今回、自分が年齢を重ねて価値観や視点が変わったのか、彼もまたある意味で哀れな人に見えました。
 薬がないと高揚できない。
 生きたいともがく人間を殺めることでしか、生きる喜びを感じられない。
 一見、誰もが言いなりになってくれて思い通りに生きてて勝ち組に見えるのに、誰とも心を分かち合えない孤独を感じて、仕方がなかった。
 目的無く生きることの哀れをスタンフィールドから感じて、なんだか憎み切れない人でした...

 謎、というか……未消化な部分が。

 レオンが渡米してから世話になっていたトニーのおじさん。
 この人は今後のマチルダにとって、敵なのか味方なのか。
 学のないレオンの金庫番として、具体的な金額を伝えるでもなく、必要な分だけ金を出してやる、というトニーおじさん。
 その後、マチルダにも同じことを言って、月1しか来るな、みたいな。
 スタンフィールドが消えたところで、麻薬密売組織や警察の裏の顔が消えることは、まずない。
 トニーのところにははこれからも依頼主がやって来て、暗殺の請負を続けるのだろうと思ったり。
 腕の立つ掃除屋は、きっとレオンだけではないだろうし。
 願わくは、トニーおじさんは何人ものお孫さんもいる、子供が好き、だから、マチルダにも成人するまで誠実であって欲しいな、と思います。

 無口な観葉植物、レオンの友達。
 それを学校の庭に植え、根付かせてあげるマチルダ
 あれは、何を象徴しているんだろう、と。
「もう大丈夫」
 観葉植物を介してレオンに語り掛ける彼女は、誰に向けて、何について「大丈夫」と語ったのか。
 地に足をつけて生きていく、というレオンへの宣誓なのか。
 自嘲気味に「根を張ることが出来ない、俺と同じだ」と言ったレオンに向けての「私の中に根付いているから大丈夫」という意味なのか。
 それとも「レオンはここで私と根付いて生きている」という自分への生きる支え、意義、意味として自分へ言い聞かせていたのか。
 泣くことをやめて無心に観葉植物を植える彼女の中にあったものが、今回も見つけ出すことが出来ませんでした…。

 光と闇の使い方が秀逸で、特にラストシーン、レオンが現場であるアパートからそこに面した道路へ向かって歩いてゆくシーン、その後の展開が解っているから余計に感じるのでしょうが、
「これから、ようやく人として生きられる。マチルダと生きていける」
 という希望と明るい温かな未来の象徴のような光で、それが傾いてゆく1-2秒という本当に短い間に、ぶわぁぁぁぁ!! と涙腺緩みました…っ!

 何度も観ているのにやはり涙腺緩みます…よい作品は、何度見てもよい…。
 買い推しの逸品だと思います。