【20.07.01.】『Missing 神隠しの物語』感想
- 作者:甲田 学人
- 発売日: 2020/05/23
- メディア: 文庫
【ここから感想です】
この作品は、作者の甲田さんが本作品でデビューを果たした2001年に電撃文庫として発行されたものを大幅改稿したもの、だそうです。
ジャンルはオカルト学園ミステリー。(だと思います)
作者さん曰く、
「時代が当時よりますますデジタル化したので、例えば今でいうところのガラケーをスマホに変えたりなど、今の時代に違和感なく読めるように改稿した部分もある」
とのこと。
シリーズ全13巻の第1作目だそうです。
神隠しの噂がある地域に広がる学園都市を舞台にしたお話。
聖創学院大付属高校に在籍する学生、空目(うつめ)恭一が学友3人に「彼女」を紹介した後、忽然と消えてしまいます。
空目と同じサークルで友人として仲が良かった3人の学生は、彼のことをそれぞれが
「カリスマ」「初恋相手」「幼馴染」と位置付けており、彼の失踪やその直前の「彼女紹介」という彼らしからぬ行動に疑念を抱き、
「神隠しでは…?」
と彼の捜索に奔走する、というお話です。
冒頭は、この町に伝わる伝承と空目と「彼女」の出会いのシーンから始まるので、空目が主人公かな、と思ったのですが、4人全員がメインキャスト。
電撃文庫版読了の知り合いによると、このあとシリーズでは主に「あちらの世界」と繋がりやすい(らしい?)空目の活躍が際立つそうで、シリーズ1作目として見ると、空目の活躍が地味(実は一番すごいことをやってのけているんですが)でも納得、という感じでした。
メインキャストの4人+異界からの攻撃を阻止する「組織」のエージェント・基城氏と一緒に疾走していく感覚で、あっという間に読了してしまいました。
あっという間と感じながらも、密度がすごい。
読み進めれば読み進めるほど、主に空目の行動が謎過ぎて、途中で休憩を挟めませんでした。
読む側にずっと気にならせるストーリー展開がとにかくすごかったです。
メディアワークス文庫版を読む今の私は、基城氏に近い年齢、彼が「こちら」の世界を守るために、大切な家族を守るために家族を捨てて異界と戦うのだ、という下りに切なくなってしまい、彼の結末に「作者さん、助けて欲しかった(無理なのは分かっている)」と思ってしまいます。汗
まだ高校生だったころからそれほど経っていない2001年にこの作品と出会えていたら、もっと違う読み方や感想があったんじゃないかと思うと、リアルタイムで作者さんのデビュー作品を読めなかったことが悔しいです。
そのくらい、空気が現在と2001年当時、同時に物語の中独特のものが絶妙な匙加減で溶け込んでおり、ぐいぐいとラストまで引っ張られていくお話でした。
twitterにて、作者さんを始め多くの作家さんが「初動大事なので予約や発売1-2週間以内に購入お願いします」と仰っています。
シリーズ1作目の初動が芳しくないと続刊を出せないとのこと。
全13作品を読破したいので、伝承モノ伝奇が好きな方には、ぜひ購入のご協力をお願いしたいと思っています。
全作を読みたいと思わせる大好きな世界観と空気のお話でした。