本と映画と日常と

自分が読んだ本、鑑賞した映画と日常の徒然を書き留める備忘録ブログです。感想記事にはネタバレもありますので、各自の判断と責任のもと閲覧くださいませ。

【18.01.06.】『DEVILMAN crybaby』鑑賞

 

あらすじ:
泣き虫の高校生・不動明は、幼なじみの飛鳥了と再会し、危険なパーティに誘われた。
そこで明は見る。悪魔に変わっていく人々を。
そしてまた明自身も……。
DEVILMAN Crybaby公式サイトより)


『DEVILMAN crybaby』2018年初春、Netflixで全世界独占配信決定!


【ここからネタバレ感想です】

 

全10話鑑賞直後、これを書き始めている現在時刻は午前5時なのですが、何から書けばいいか…っ。

Wikipediaによると、デビルマン週刊少年マガジンで連載開始したのが1972年6月くらい?(25号から)
1ヶ月後の7月からアニメ化で放送開始みたいです。
リアルタイムで放送されているころの私が視聴できるはずがないのですが、再放送で観ていたのかもしれません。
なぜか青い肌の色にデフォルメされたデビルマンが空を飛んでいるシーンだけ記憶鮮明。
あとはなぜか私の汁椀がデビルマンでした。笑

その後OVAが出ているようですが、それは鑑賞していません。
(実写版は一応円盤で観ましたが記憶に残ってない…)
実はOL時代、職場の資料用戸棚に永井豪好きな上司が『ヴァイオレンス・ジャック』と『デビルマン』を昼休みに社員が読めるようにと置いてくださっていたのですが、これを読んで半端ないバッドエンドに仕事が手につかなかったというトラウマがありまして。苦笑

という個人的な前振りはいい加減にオシマイにして、そんな流れで本作の感想。

観る気になったのは、永井さんの絵柄じゃないから、少しは映像的に耐えられるかな、と思ったからでした。
あとは、あの救いのない絶望的な終わり方にも関わらず、それでもストーリーが好きだから。
人間の醜さをこれでもかというほど露出させているにも関わらず、諦めずに人の善意や理性、強い意志を信じたいと思えるのは、ひとえに明くんという存在のおかげで、彼を慕い追随し、飛鳥了と戦ってくれるデビルマンたちが結集してくれるあのシーンが私にとっての救いでした。
その結果がどうであれ、定められている何かしらに屈服させられて個を諦めるのではなく、最後まで自分で在り続けることの崇高さを垣間見た気がするので、原作初読が四半世紀前なのですが、それは今回この作品でストーリーを辿り直してもやっぱり変わることのない感想でした。

脚本がどれだけ原作を尊重してリスペクトされたのか、作画班がどれほど見せ場に全力投球して永井作品であることを前面に押し出しているのかを感じさせられる映像とストーリーです。

72年と言えば、スマホどころかケータイすらない時代。
やっと沖縄が日本に返還されたころ。
原作を読んだ当時、なぜにデビルマンが日本にばかり、とか、いきなり終盤で世界戦争になっていたり、という無茶振りな展開と感じていた部分が、今回のアニメ化では現代に即した様々な設定を施されており、若い世代の人でも(趣味嗜好の面で合わない場合はさておき)見応えのある作品になっていました。
例えば原作では、牧村家に悪魔疑惑が掛けられて美樹ちゃんがああいったことになるのですが、その根幹にあるのは「近隣住民の無責任な噂」だったと記憶しています。
飛鳥了が、明くんがデビルマンだと暴露したところは同じですが、明くんと暮らしている牧村家の人間も悪魔に違いない、みたいな展開だったかと思います(記憶不鮮明なので、もし違っていたらすみません)。
本作では、現代らしく、美樹ちゃん自身がSNSを通じて、
「明くんは悪魔だけれど、心は変わらない人間です」
「明くんは悪魔の体を持つけれど人間の心を持っている人をデビルマンと言っていました」
「明くんは人のために涙を流す人です」
「自分のために涙を流したことがない、強い人です」
「そういう優しい人を、人間でも悪魔でも、私は受け容れます」
と訴えます。
それに対して速攻でリプライがつくのです。
「コイツやべえ」
「頭涌いてる」
「この女も悪魔じゃね?」
「パクリ乙」←72年版デビルマンが放映された過去の描写が作中で散見されます。
デビルマンここにもいたw」
「悪☆魔☆降☆臨」
罵詈雑言の嵐が画面いっぱいに乱れ飛ぶ様は、日ごろネットで見るアレそのもので、明くんではありませんが、人間こそがデビルマンより悪魔に近い存在だ、という憎悪が湧きました。
この作品で永井さんが描いた根幹をそのままに、ため息が出るほど素晴らしいデフォルメの仕方で現代に合わせた構成や設定になっています。

とにかくキャラのヴィジュアルが全然違うので、まったく期待せずに観たんです。
美樹ちゃんはおかっぱ頭じゃないし、キャラデザは完全に永井豪キャラからかけ離れた今どきの絵柄だし、どうなんですか?と(す、すみません…)
彩色も割とベタ塗りで、予算の関係上、あまり作り込みができないのかなあ、なんて憶測まで浮かんでいました。

違った…と、思います。
緻密な作画のI.G.作品を好んでいるため、前述のような憶測が飛んだものの、観てみれば、I.G.レベルの緻密さでデビルマンやられたら心が死にます…PTSDレベルのグロになると思う…というくらいには原作に忠実なグロ描写、グロシーンの色合いは、どこか『シン・シティ』を思わせました。
敢えて血の色を赤にしないことで幾分か緩和、みたいな。
それほど描写そのものがグロでした。
グロが好きなわけではありませんが、凄惨であればあるほど、明くんの悲嘆を観る側にも強く感じさせるような気がします。

グロだけではなく、モーションがすごくよかった。
(よかった、という表現はなんか違う気がしますが)
両手腕脚の動きがエロティック。
すみません、明くん限定です…。
ミーコも悪魔化してからの走る動きがすごく躍動的で、人外を思わせる獣的な動きがとても魅力的でした。

全10話と尺が短いので、若干ダイジェストっぽい感覚に陥る部分もありますが、原作でさらっと10P以内で収めていた部分をガッツリ1話で構成していたのは、1人スタンディングオベーションしてしまうくらい嬉しかった…という表現も合わないのですが、適切な語彙を持ち合わせておりません…。
最終話で、明くんだけでなく他のデビルマンたちも明くんと同じ悲しみや絶望や悪魔殲滅への強い使命感を持っていて、彼らは自分が死ぬと分かっていても、欠損した明くんの部位を補填していきます。
そのくシーンは見事なオリジナル脚本だったと思います。
また、終盤の牧村家の前でのあれやそれやも、オリジナルキャラクターが登場していまして、彼らの使い方がとても素晴らしかったです。
原作では一家が一度に牧村家で…という展開だったのですが、本作では美樹ちゃんの弟、タロが悪魔化していることに気付いたお母さんが、それをお父さんや美樹ちゃんには告げずにタロとともに家を出ます。
お父さんが2人を探し出したとき、そこに見たのは最愛の妻を食らっている息子…。
お父さんは「おまえはもう俺の息子じゃない!」と何度も銃口を向けるのに、どうしても撃てない。
このオリジナルシーンを入れるために、前述のオリキャラたちが美樹ちゃんを守るために登場したのではないかと。
お父さんの葛藤はそのまま観る側の葛藤にもなり、凄惨さだけでなく、「悪魔化」というフィクションの部分を現実になぞらえたあれこれに置き換えたときの逡巡を彷彿とさせ、とても苦しく胸の痛む思いで一連を視聴してしまいました…。
※追記
家人も視聴したのですが、このシーンは『SEVEN』のラスト、ブラピ演じる刑事とお父さんのモーションが同じでなんだかな、という辛辣な意見をいただいてしまった…。涙
追記・ここまで
また別のオリジナル部分で、同性愛の人が登場しています。
悪魔化した一方が、幼馴染で大切に思っていた相手を悪魔化した際に殺してしまったっぽいシーンが出てきます。
彼は心を失くしてはおらず、ずっと泣き続けている。
この辺りも現代に即すために挿入されたオリジナル部分ですが、なぜ同性愛者を取り入れたか、と言えば、すべての人に言えることであり、蚊帳の外から眺めることを許さないという創り手側からのメッセージなのかなあ、などと愚考。
明くんと美樹ちゃんが異性愛であれば、そのサブキャラの恋愛は同性愛。明くんと飛鳥了は4つの性の全てが男性である明くんと、4つの性に不一致が見られる飛鳥了、という関係。
愛憎という心理において、例外は一つもないというメッセージと受け止めています。
オリジナル要素が入っていても原作と負けず劣らずの素晴らしい脚本でした。

声優陣がどの方も(エキストラ含めて)登場人物の心情を見事に演じていて、その点も本作の素晴らしかった点です。
シレーヌ田中敦子さん(甲殻の素子さん)、最高でした…もう、ホント最高でした…。
住民9「永井豪」には笑いました…原作者…気付かなかった…っ。笑

最後の最後、原作では見開き2Pで締めたシーン、原作の飛鳥了は何も語らず表情だけで彼(彼女?)の絶望を表現していましたが、本作でははっきりと(本人にはこれまでない概念だったので明確な言葉としてはないのですが)自覚していました。
あとは観る人に託されているのでしょうか。
それとも私が深く共感・分析できていないだけかもしれませんが、飛鳥了が明くんを抱きしめて号泣したあと、堕天使であるサタン以外の天使が降臨、割れた月は2つになり、地球は元の青い地球に戻っています。
飛鳥了=サタンやその仲間だった悪魔たちは、神が遣わした天使たちに殲滅されたのか、それとも悪魔でありながら人の心を知って持つようになったサタンもデビルマンという認識をされた中で神の制裁を受けたのか。
この辺りは未だいろいろと考えてしまっています。
せめて、人の心を持った中で飛鳥了も滅されていれば、少しは救いかなあ、と。

余談ですが、ひたすらにアモンを取り込んだ明くんの筋肉にフィーバーしてました。笑
主に細マッチョな上腕二頭筋と逆三角形と腹筋に。笑

NETFLIX、有料ですが契約してよかったと思います。
オリジナル作品に秀逸なものが多い。
3月から公開開始の『B: The Beginning』も非常に楽しみにしております。
(こちらは大好きI.G.さん制作なので安心して観られる&平田さんバンザイ作品のようなので!)
NETFLIXさんは契約したばかりなのでよく分かっていないのですが、配信終了してしまうこともあるのでしょうかね?
もしそうなら円盤欲しいな、と思ったり、でも円盤化されるのかな、とか、まるで分かってないので、また調べないと…。

久し振りに長々と語りたくなってしまう新作を観ることができて大満足の逸品でした。