本と映画と日常と

自分が読んだ本、鑑賞した映画と日常の徒然を書き留める備忘録ブログです。感想記事にはネタバレもありますので、各自の判断と責任のもと閲覧くださいませ。

【17.06.25.】『ブギーポップ・アンチテーゼ オルタナティヴ・エゴの乱逆』感想

 

あらすじ:
 君は世の中が間違っていると思ったことはあるかい?
 もし不満があるなら君は反逆しなければならない。
 だが気をつけなきゃならないのは、君の行動でとても迷惑する人が出ることと、このぼく、ブギーポップに殺されてしまうかも知れないってことだ―

 統和機構内部の勢力争いに巻き込まれてしまった織機綺と谷口正樹。
 この若い恋人たちに科せられた試練は、自分自身をも裏切るいびつな心の影と直面することだった。
 お互いのためと考えながらも、決断できない弱い精神が二人を苦しめる。
 その中で浮かび上がってくるのは、かつて世界を滅ぼしかけた危険な呪いと、己を見失った人々の混乱した焦燥―

 思考に潜むオルタナティヴ・エゴという罠から、綺たちは脱出して正しい道を見出すことができるだろうか…?
(「BOOK」データベースより)

【ここから感想です】

7月にブギーポップの新刊が出ると知って「あ…まだ未読だった」と思い出し、慌てて読書。

ラノベを網羅しているわけではないので大声では言えないのですが、久々に
「ああっ、ラノベってこういう感じだよね!」
という読後感を堪能させてもらいました。

オルタナティヴ、この作品では代替えという意味合いで用いられています。
(ほかに「二者択一の」という意味があるようです)
アンチテーゼとは反対、真逆、対照といったような意味合い。
もう、これだけで中二心をくすぐるというか。笑

そして、目次。
目次だけなら著作権侵害にならないだろうか…?

 

P19 anti-1 反─葛藤(kr津談することから逃げる)
P69 anti-2 反─構想(思い込みは常に崩れ去る)
P111 anti-3 反─救済(自らの可能性を放棄する)
P153 anti-4 反─成長(間違った方へ流れていく)
P179 anti-4 反─幻想(真実に繋がる訳ではない)
P217 anti-6 反─世界(閉ざされた未来への志向)
P253 anti-7 反─調和(恐怖なき心に平穏はない)

これに加えて各章の扉には安定の『霧間誠一』語録が綴られているわけで、
未読の段階では各章のタイトルと霧間誠一の著書からの引用で引き込まれ、
読了後は改めてサブタイトルと霧間誠一の言葉を再々読み返して唸らされる、という、
この構造が個人的にはすごく好きです、中二心をくすぐられる...

今回もまた凪は登場せず、というのがちょっと残念。
でしたが、義弟の正樹くんと、その恋人の綺ちゃんがメインということで、
純愛路線まっしぐらのこの2人のゆっくりな成長を見るのも好きなので、楽しませてもらいました。
ネタバレさせずに感想を書くのが非常に難しいので苦手なのですが、
私の中で、織機綺は、主体性も信念も自我=エゴというものが希薄で危うくて儚い子、という印象を持っていました。
もしブギーポップシリーズを読んで私と似た印象を持っている方から見ると、
今回のお話で、彼女が如何に頑なな自我を持っているのかを思い知らされる…かもしれません。
自分は無価値だという認識を持っている綺ちゃんは、そんな自分を必要だと言ってくれた凪と正樹、
凪の友人の末真ちゃんの3人に対してだけは、自分の中で特別な存在と位置付けています。
そういう自分が嫌いとか価値がないとかいうネガティブな彼女を、私は弱くて儚い可哀想な子、と思っていたのですが。
なんか、トンデモナイ勘違いだったかも、と思わされる内容でした。
綺ちゃんの中でぐるぐる巡っている葛藤は、実は誰もが持っているのではないか、
と、つい我が身を振り返ってしまいます。
正樹の中で不意に沸き起こった葛藤もまた、ふと我が身にも当てはまることではないか?
と、急に足元が不安定になる感覚に陥ったり。
上述の目次が、各エピソードのテーマ的なものかな、と自分は解釈しているのですが、
当然のように「こうである」と決めつけて受け止めていたものが、
急に「それは自分の決めつけではないか?」と自覚させられた瞬間の動揺は半端ない気がします。
大人になると「そんなものだし、そういう時期を超えちゃったしね」と苦笑いを浮かべるところなのでしょうが、
自分はまだ大人になり切れていないので(笑えない…)、自分の身の回りのことを振り返ってゾッとしました;
確信がない中で決断する、というのは勇気がいることだと思います。
そんな状況下で自信などこれっぽっちも持てない中、正樹と綺は、
それでも限られた時間の中で必死に考え、即行動に移します。
シリーズを通して見ていて、凪は別格(まあ、彼女は元々MPLSだし)として、
合成人間やMPLS、それとブギーポップである宮下藤花ちゃん以外の人は、
正樹を含めて平凡な人だと思っていたんです。
けれど、やっぱり凪の弟なだけありました…。
彼と綺ちゃんの勇気ある自覚が今回の『敵』が何(誰、ではないと思います)かを判断していた
ブギーポップに手を下させずに済んだのではないか、と。
直接的な『敵』はあの人でしたが、キーパーソンはクワガタくんで、
彼の概念というか在りようが、今回の『世界の敵』だったのではないかと思って読んでいましたが、
まだ初読なので、また読み違えている部分が多いかもしれません;

シリーズのどれもが、『世界の敵』は概念だと表現しているとは思うのですが、今回のように、
概念そのものが『敵』になる人物の中で定まっていないのは初めてだったんじゃないか…と思いつつ、
自信がないので『笑わない』から通しで読み返してみようかな、と思います;

ふと「あれ? 正樹って義弟だよな? 異父姉弟じゃないよな?;」と不安になって、
wikiで調べてみたら、懐かしい名前がダダダーっと並んで、
一から読み直したくなっただけ、という話もある。笑

たくさんの登場人物がいるんですけど、未だにダントツで霧間凪推しで、
そんな彼女の機動力になっている黒田サン=スケアクロウが一等イケメンに見えてしまう私でした…。
スケアクロウはかなりロウスペックの合成人間なはずなんだがな…。
これはアニメと『夜明けの~』の影響が大きい。笑
アニメももう一度通しで見たいな、と思って時々ゴソゴソ漁ってみたりするのですが、
OPだったシカオさんの『夕立ち』のころなので、もう10年以上前、ってことになるので、
売ってるわけないんだよな、と若干涙目…。

7/7に『ブギーポップ・ダウトフル 不可抗力のラビット・ラン』が発売されるので、楽しみです。
朱巳vs健太郎クンらしいのだけど、また凪の登場はないのかな…。
段々と健太郎くんが凪なしでも戦えるようになっていているので期待しないほうがよいのか…。

ブギーポップは、今のラノベと雰囲気が全然違うという印象があるので
ラッキースケベも、平凡な主人公の巻き込まれ事件みたいな超展開もないですし)、
好みが分かれるかもしれませんが、頭が固くなりつつある私には、
固まっていた固定概念をまるっとぶっ壊してくれるこのシリーズは未だに好きで追い駆けてしまいます。
賛否両論ある意見ではあるらしいですが、「ラノベの先駆け」と言われる本シリーズ、ぜひ読んでみてください。