本と映画と日常と

自分が読んだ本、鑑賞した映画と日常の徒然を書き留める備忘録ブログです。感想記事にはネタバレもありますので、各自の判断と責任のもと閲覧くださいませ。

【17.05.24.】『ニューヨーク・ニューヨーク』感想

あらすじ:
 ニューヨーク市警に勤めるケインは、同性愛者であることを隠し、一夜限りの相手を求めて夜ごとマンハッタンに繰り出していた。
 だが理想の青年・メルと出会い、運命の愛を見つけることに…。
 ゲイをテーマに愛とヒューマニズムを描く野心作!
amazon.co.jp 作品紹介文より引用) 

 

あらすじ:
 結婚式の翌日、幸せの絶頂にいたメルが突然姿を消した??。
 僅かな手掛かりを頼りに、メルの行方を必死に追うケイン。
 FBI捜査官・ルナと共に、メルを監禁する犯人と対峙したケインは…!?
 さらに感動の最終章では、愛を全うした彼らの生涯を描く。
amazon.co.jp 作品紹介文より引用)

忠告:この作品はBLなので、苦手な方は自己責任で感想をお読みください。

感想を書く前に。
BLジャンルを好む方は作品そのものだけでなく、レビューや感想についても繊細にいろいろ思うところがある、という話も散見されるので、このジャンルの感想は公言しないでおこうと思っていたんですが、ちょっとこのごろ切実に…健忘著しくて…備忘録させていただきますが、あくまでも個人の感想です。
私はBLの「こう読むべし」という部分を全く理解していないので、文芸やラノベなどと同じような読み方しかできません。
好きな理由や面白かった部分、また疑問に思ったところや読み流してしまった部分があることにより、腐女子の方に不快感を与えてしまう場合もあるかと思います。
その場合は読むのをやめて、そっと立ち去っていただければと思います。

【ここから感想です】


 1995年から『花とゆめ』で連載されたのが初出のコミックのようです。(wiki
 twitterのタイムラインにあった大阪の同性カップル里親に関するニュース記事に書かれていたコメントからこの作品を知りました。

 今回、敢えて両方のamazonへのリンクを張りました。
 どちらのレビューも見て欲しいと思いまして。
 同人誌のBL本を読んで同性愛に嫌悪していた方、ゲイの方、初めて同性愛を扱った作品を読んだ方……多種多様な人が異口同音に「素晴らしい」とコメントを残しています。
 私は文庫版を購入したのですが、そこにある1巻の解説も含めて、多くの人に読んでいただければと思わずにはいられない作品です。
 感想を書こうとブログの窓を開いたのですが、自分の拙い言葉では伝えきれません。
 ケインが警察ということもあるからかもしれませんが、事件に巻き込まれることが多いなど、フィクションだなと思ってしまう部分も確かにあるでしょうが、この作品で伝えたいことは、そういった部分に注目するのではなく、彼らの在りようや彼らを取り巻く社会の在りよう、現実に近いであろう置かれているそれぞれの立場(ゲイ当事者、その家族、職場にゲイがいる人、身近にはいない人etc)で、この作品を通して今一度自分自身の置かれている立場を振り返ってみないか、と……。
 私も大概読解力がないので強くは主張できませんが、そんなふうに解釈しています。

 この作品ではゲイを取り扱っていますが、ここにはいろんな差別対象が当てはまると思います。
 〇〇だから常に虐げられているわけではないし、〇〇だから常に被害者というわけでもない。
 〇〇だから頭がオカシイ、〇〇だからどうせ××だろう。
 例えば、自分が差別を受けていながら、別の種類の差別は無自覚に自身も行っているのではないかと考えさせられたり、これまでの自分の価値観を揺るがされたり、ただただこの2人の恋愛が尊く感じたり切なかったり、心が忙しく揺れ動く作品でした。

 1995年と言えば、エイズパニックと時代が重なりますよね、確か。
 そういう時代にこの作品を取り上げた作者さんと出版社に敬意を表します。
 そう言えば、フラワーコミックスの『P.A.プライベート・アクトレス』も似た時代でHIVを取り上げた話がありました。
 コミック、という手軽に読める媒体でなら、小説よりももっと強くこういったことに関心を向けて欲しいと伝えられるのかな…などということまで考えてしまったりして。

 恋愛であり、社会派であり、妄想世界のあり得ないキャラクターというわけでもなく、リアルも感じさせ、一歩踏み込めば自分も無関係ではないことだと思わせる逸品でした。
 本当に、一人でも多くの方に読んで欲しいです。
 ホモフォビアの方にも、アライの方にも、当事者であろうLGBTの方にも、無関心の方にも、自分には関係ないと思っている方にも、一人でも多くの人に読んで欲しいです。
 そこに当てはまるのは同性愛だけでない何かも、慎ましく潜んでいる作品だと思いました。
 久し振りにポロポロ泣きながら読みました。
 ラストは胸が締め付けられるような思いを抱きつつも、私はハッピーエンドだと感じながら読了しました。