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自分が読んだ本、鑑賞した映画と日常の徒然を書き留める備忘録ブログです。感想記事にはネタバレもありますので、各自の判断と責任のもと閲覧くださいませ。

【20.04.25.】ジャン・コクトー監督版『美女と野獣』鑑賞

 

美女と野獣 [DVD]

美女と野獣 [DVD]

  • 発売日: 2011/02/22
  • メディア: DVD
あらすじ:
昔、年老いた商人 がいた。
末娘のベルは美しく優しい娘で、いつも意地悪の二人の姉にいじめられていた。
彼女は腕白な兄の友達アヴナンから求婚されていたが、父の世話をするために拒んでいた。
父は自分の船が沈んだと思っていたので破産を覚悟していたが、その一隻が無事入港したと聞いて喜んだ。
二人の姉は宝石や衣装をお土産にねだったが、ベルは唯 バラの花が欲しいといった。
父が港に着いてみると船は債権者に押収されてしまい止むなく夜道を馬に乗って帰って来る途中、いつの間にか道に迷ってこれまで見たことも聞いたこともない荒れ果てた古城に行き当った。
人影もなく静まり返った場内の異様な恐しさに逃げ出 して庭に出るとそこには香しいバラの花が咲き誇っていた。
その花を一輪手折った時、 突如眼前に一個の怪物が現われて立ちふさがった。
形は人間だが全身に毛がそそり立ち、もの凄い形相をして彼をにらんでいた…。

 

【ここからネタバレ感想です】

 

説明するまでもなく、多くの人が知っている物語。
私は原作を読んだことがなく、コクトー版を長い間観たいと思いつつ今回が初見なので、ディズニー版しか知らなかった私には、とても新鮮で未鑑賞の物語を観る感覚で楽しませてもらいました。

とにかく、映像の綺麗さが半端なくて、モノクロだからこその映像美だから、この映像で観れたことが嬉しいと同時に、矛盾するのですがカラーでも観たいと強く思わせる映像のすばらしさでした。
ベルのドレスの色合いや、キラキラとした画面をカラーで見てみたいとか、風景が夜と昼との境界を曖昧にしている画面という印象もあったので、カラーとモノクロで見比べたい衝動に駆られました。

内容については、前情報でいくつかの違いは知っていたものの、以下の点がディズニー版と違う点でした。
1)ベルには2人の姉と、ぐうたらでギャンブル&酒狂いの兄がいる
2)薔薇の花びらの最期の一枚が落ちたら野獣死亡のフラグ→ベルいないと悲し過ぎて死んじゃう
3)ベルの住んでいた村人が野獣退治→愚兄とベルに思いを寄せていた男が野獣退治と財産を狙いに来るだけ
4)ベルに言い寄っていた男がガストンじゃない!(アヴナン)
5)野獣が最初から最後まで紳士
6)ベル、実はアヴナンが好きだった
7)馬はお父さんの馬じゃなく野獣が飼っている、魔法を掛けられている馬
8)ルミエールやポット婦人がいない!
原作はどういう設定になっているのか興味が湧いてしまうくらい、コクトー版とディズニー版の違いがかなり大きかったです。
特に(5)と(6)は「え…えぇっっ!!?」となりました。笑

1)ベルの姉と兄
姉2人は「あれ?私が見ていたのはシンデレラ?」と勘違いしそうなくらい、シンデレラに搭乗する姉たちでした。笑
原作の童話をほとんど読んだことがないので分かっていないんですが、欧州では姉妹の仲がよろしくない設定が多いのでしょうか?
愚兄はいったいなんのために存在していたのか…確かに末の妹をかわいく思ってはいたのでしょうけれど、行動が伴ってないよ、と終始ツッコミが止まらなくて困りました。笑
お父さんは、そんな息子を教育する気がなさそうだし、この家庭環境でよくベルみたいな清らかな心の娘が育ったなあ、と身も蓋もない感想を抱いてしまいました。

2)バラの花びら最後の1枚云々はなし
野獣とベルの初対面、ベルがいきなり卒倒しちゃうんですよ…野獣のあまりの醜さに…。
戸惑いながらも地べたに卒倒したベルをベッドへ寝かせてあげようと、野獣が抱きかかえるのですが、その清らかで美しい寝顔を見て、野獣トゥクンで一目惚れ…ピュア過ぎる…。
(5)(8)にも掛かる感想なのですが、とにかく野獣さんが最初から最後までピュアピュア紳士の律儀マンで、観ているこちらが保護欲と母性本能を刺激されまくってどうしようかと…ッ!
あれこれ具体的なアドバイスをするルミエール(ろうそく)やポット婦人(ポット)が居ません。
あくまでも、召使たちはご主人様が少しでも快適に過ごせるように黙々と働く使用人どまり。
ベルに少しでも好意を抱いてもらおうと悩みながらあれこれする野獣さんの不器用さや律儀さ一途さが可愛すぎてどうしようかと思いました。
使用人が何も語らないからこそ寂しくて、ベルパパが勝手に薔薇を手折ったときの条件が「娘はいるか。娘を差し出せば赦す」だったのだろうなあ、と、ディズニー版より行動原理に現実味がある気がしました。
呪いの理由も、野獣さん自身が傲慢だったからとか、自分の美貌を鼻にかけていたから、といったような「彼自身の自業自得」な面は一切なく、信仰心の足りない野獣さんの両親のとばっちりで醜い姿で産み落とされたというお気の毒な経緯…親を選べないって、生まれたときから罰ゲームな人生で、ベルじゃないんですが頭を撫でてあげたくなりました…。

3)愚兄とベルに思いを寄せていた男が野獣退治と財産を狙いに来るだけ
「いきなりスケールがちっさくなったな!笑」
という苦笑は否めません…しかもおバカコンビ…。<愚兄&ぐうたら彼氏候補

4)ガストンじゃない!
ディズニー版と実写版を先に観ている私としては、当て馬として小物過ぎました…。
アヴナン「ぐうたらだけど、結婚して」
開き直るなオイ!というツッコミが…っ!
しかも、ベルはどうやらそんなアヴナンのことを実は好きだったらしく、現代なら確実にDV被害者になりそうだな、という醒めた目で観てしまった自分を呪いました…。
ルクエヴァのガストンがカッコ良過ぎました…。<実写

人間の姿になった野獣さんの容貌に「え~…」と思ったのは私だけでしょうか…。
ダメンズなアヴナンは、ベルと野獣の財産を狙って城に忍び込み、財宝のある塔で(おそらく)見張り番をしているディアナの像に射抜かれ、野獣になる呪いを掛けられるわけですが、同時に呪いを解かれた野獣氏の容貌が、まんまアヴナンになるんですよね…。
野獣氏「アヴナンのことを愛していたのか」
ベル「そうね」
野獣氏「ではなぜ球根を断った」
ベル「お父様の傍にいたかったの」
変身後
野獣氏「この姿は嫌い?」
ベル「嫌いよ」「うそ」
え~…野獣氏はアヴナンの代わりですか、「お父さんを招待して一緒に暮らそう」という野獣氏の財産目当てですかベル!
…と思ってしまった私の心が穢れているんでしょうか…。汗

ストーリーはディズニー版より単純明快、場面転換も時代ならではの部分が多々ありますが、とにかく衣装や光の使い方、カメラワークが本当に眼福で目と脳が幸せになる作品でした!
あと、野獣さんかわいい、野獣さんメチャかわいい…。
とてつもなくかわいい野獣さんが見たい方にはおススメです。