本と映画と日常と

自分が読んだ本、鑑賞した映画と日常の徒然を書き留める備忘録ブログです。感想記事にはネタバレもありますので、各自の判断と責任のもと閲覧くださいませ。

 

ジェーン・エア [Blu-ray]

ジェーン・エア [Blu-ray]

  • 発売日: 2020/07/03
  • メディア: Blu-ray
 

あらすじ:
結婚式の朝、ジェーンは知った。
最愛の人の恐ろしい秘密。
屋敷の隠し部屋に、幽閉した「妻」がいることを―。
運命はジェーン・エアに、過酷なカードを配った。
幼くして両親を亡くし、裕福だが愛情のカケラもない伯母に引き取られ、無理矢理入れられた寄宿学校では理不尽な扱いを受ける。
それでもジェーンは、決して屈することなく、信念と知性で自ら望む道を切り開き、名家の家庭教師という職を手に入れる。
充実した日々を送るジェーンの前に、気難しくどこか陰のある屋敷の主人ロチェスター氏が現れる。
やがて二人は互いの独特な感性や考え方に惹かれ合い、ロチェスター氏は身分の違いを越えてジェーンに結婚を申し込む。
だが、彼には恐ろしい秘密があった。
それは、屋敷の隠し部屋に幽閉した妻という存在だった―。
amazon商品の説明より)

映画『ジェーン・エア』予告編



【ここからネタバレ感想です】

 

2011年版を鑑賞しました。
映像が美しかったです!
原作のほうは、先般反省したばかりにも関わらず、荒っぽい読み方しかできなかったので、近々また借り直して、今度こそ精読しようと思いつつ、先にhuluで映像を鑑賞した次第です。

粗い読み方ながらも原作を読んでから鑑賞して正解でした。
全P850ほどもある大長編を2時間の枠で収めるのは至難の業だったのだろうと思います。
細かな設定やエピソードが随分と省かれていたので、一部ダイジェストなところがありました。
ジェーンが物心つく前に両親を亡くし、リード家に引き取られた経緯は一切なく、リード家の誰がどの子で、という部分は原作未読だと分からないかも、です。
また、セント・ジョン・エア・リバース氏とジェーンが従兄妹関係にあることにも触れておらず、自分の恩人だから家族になりたい、とジェーンが自分の遺産をリバース兄妹と4分割する、という話に変わっていた(または従兄妹関係であることを鑑賞者が知っている前提としていた)ところが原作との違いかな、と。

セント・ジョン氏との従兄妹関係が端折られていることと、セント・ジョン氏の人となりについてのエピソードがほとんどないので、映画だと彼が当て馬のように見えてしまいまして…ちょっと、気の毒な振られキャラになっていた感が…。
彼には彼なりの信仰からくる確固たる強い意志があり、そこがジェーンと「血筋だなあ」と納得させる人物であり、原作では無自覚な男尊女卑にイラっとしつつも嫌いにはなれない不器用な善人という人だったのですが、映画ではただの我欲キャラに見えてしまいました…。

あと、映画ではリード夫人が最期のときに善人になっていました。
うー…ん、原作では、最期までジェーンを憎み疎んでいる感じだったのですが、もしかすると私の読み違えかもしれないので読み直します。汗

原作との最大の相違点、声を大にして言いたい!←笑
ロチェスター氏の設定、いかつくて女性から疎まれがちな顔立ち(今風で言うところのブサメン)
・容姿端麗が淑女として最低限必要なのが当たり前とされる風潮の中、二言目には「美人ではない」と言われてしまうほど美しくないジェーン
原作におけるこの設定、キャスティングでガン無視ですよ!!(大変美味しゅうございました)

ロチェスター氏のパーソナリティとして、
「横柄」「気分屋」「激しい気性」「子供に辛辣」
もう、本当にそのままの演技脚本です。
なのに、原作では鼻についたそれらが…っ。
マイケル・ファスベンダー氏が演じると、いちいちカッコよくて不遜さが様になっていてどうしたものかと…っ。
あ、語彙が…となっていて、巧く言葉にできないのですが…あの配役では、ジェーンをライバル視するイングラム嬢はロチェスター氏の財産目当てで色目を使っていると言うより、ガチ恋でしょう、としか映像からは受け取れずですね…映像しか見ていない人に誤解を与えます。笑
ロチェスター氏については、映像だともう「ステキ」「カッコいい」「俺様万歳」しか言葉が出ないのでそろそろ自重します…。(赤面)

ジェーンを演じたミア・ワシコウスカ女史は、美人というか、可愛いという言葉がふさわしい女優さんで、やはり素晴らしい演技で原作で感じたジェーンの内面や彼女らしさを醸し出していたのですが、唯一「違う、そうじゃない」と思ったのが「美しくない」という原作との相違点でした。
ジェーンの潔癖さや、凛とした姿勢、ジェーンの持つ固い意志を表す表情など、どれもこれも「ホンマそれ!」という感じなのですが、ロチェスター氏とのやり取りの中で、次第に恋する乙女になっていく表情などは、もう可愛いとしか言いようがなく…美人じゃないとかなぜ周囲がそういう評価になる、という違和感でいっぱいなくらい、可愛い…ああ、ジェーンのキャスティングについても語彙が…。

ジェーンのよき話し相手であるフェアファックス夫人は、原作でイメージしていたよりも若々しくゴシップ好きなおばさんという雰囲気で、映像化作品では、彼女がロチェスター氏の妻の存在を知っていたのかどうか、どちらともとれる脚本だったように思います。
(原作では知らずにいました)

ロチェスター氏が妻の存在を隠していた理由が、原作より少し端折られていたので、印象としては
・発狂したから監禁した
・精神病院ではもっと扱いが酷いから、家に匿うほうがマシと考えた
ロチェスター氏の妻、メイソン家が家系として精神障害に至るという設定はカット
これらの変更(?)のために、ロチェスター氏がちょっと冷たい印象が増した感がありました…。

でも、ジェーンに必死で縋る姿はもだえ苦しみました…。
原作にはなかったんですよね、あの必死さが。(私の読み落としかもしれませんが)
このシーンでロチェスター氏にやられた私です…。
同時に、このシーンでジェーンが、
「主よ、お力をお貸しください」
と苦しげに天を仰いで涙を零し、直後、ロチェスター氏を振りほどいて部屋から出ていきます。
原作ではかなり長い文字数を割いてジェーンの心情を語っているのですが、映像ではこの短い一言にすべてが集約されていたために却って見る人の胸に突き刺さりました…。

映像化された作品は、原作よりも恋愛要素に重点を置いた脚本になっている感じです。
私がこの時代に無知だから以下のように感じるのかもしれませんが、この当時の時代背景を知っているかどうかで印象が変わるかもしれないな、とも思います。
今よりも神が全知全能で信じられており、女性が意思を持つことなどあり得ない前提で世の中が回っている社会で、ジェーンの行動がどれだけ当時受け入れられず、奇異ではしたなく精神を疑われるほど特異だったか、というのを知らずに見ると、その苦難が想像つかないと申しましょうか…。

自分を尊重し、自分らしく生き、自分の心に忠実=神の教えに従い(自分にも)嘘をつかずに生きることが、どれだけ困難であり、同時にどれだけ当時の女性の一部が望んでいたことなのか、ということを考えさせられる物語です。

ロチェスター氏に萌えすぎて、まともな感想が書けなかった自分がツライ…と猛省しながら、そろそろ終わりにしておきます…(逃)