本と映画と日常と

自分が読んだ本、鑑賞した映画と日常の徒然を書き留める備忘録ブログです。感想記事にはネタバレもありますので、各自の判断と責任のもと閲覧くださいませ。

【19.09.05.】『青のフラッグ』感想

 

青のフラッグ 全8巻 新品セット

青のフラッグ 全8巻 新品セット

  • 作者:KAITO
  • メディア: セット買い
【1巻】
人生の岐路に立つ高3の春──。
一ノ瀬太一は、なぜか苦手と感じる空勢二葉、幼馴染でリア充な三田桃真の2人と同じクラスになる。
ある日、二葉から桃真への恋心を打ち明けられ、協力してほしいと頼まれた太一は…!?
青春に染まりゆく3人の新“純”愛物語、開幕!!

【6巻】
木の葉が色づき、秋へと近づく──。
文化祭が始まり、太一と桃真は将来について話すうちに気持ちがすれ違う。
そんな中、再び舞美と向き合った桃真は、彼女のまっすぐな気持ちに応え、重大な決断を下す。
時の流れは、それぞれに「人生の選択」を迫る──!!
amazon「内容紹介」より)

 

【ここから感想です】

 

リンク先は1巻へのものを張らせてもらいました(追記:完結したので全巻セットのリンクを張り直しました。20.09.24.)が、現在6巻まで、まだまだ続いていく作品です。

私見駄々洩れ解説付メインキャスト】

①一ノ瀬太一(太一・タイちゃん)
中学時代に過大な自尊心をへし折られて以来、将来にも自分にも他者にも絶望している感じの高校生

②空勢二葉
何をやっても鈍くさい、太一のクラスメイト
太一の幼馴染、トーマに恋をしている(と思っていた)

③三田桃真(トーマ)
太一の幼馴染で、3年になってクラスメートになったイケメン
文武両道モテ男、だけど女子と付き合うより、いつの間にか自分を避けるようになったタイちゃんと昔みたいな仲良しに戻りたいと思っている一途で純粋な子
二葉の親友、真澄ちゃんとは共通の悩みアリ

④伊達(いたち)真澄
二葉ちゃんの親友
才色兼備でナイスバディだけど、その勝ち気な性格から太一のクラスの男子から「ゴリラ女」と言われている。笑
恐ろしいほど自制心が強く、自分の中の葛藤と折り合いをつけようと必死でもがいている繊細な子、という印象

⑤マミ
太一のことが大好きなほかのクラスの女子
屈強なメンタル&ブレない自分の在りようが最初は表出されないので、読者の第一印象はかなり悪いのだけれど、実は…と3巻辺りから好感度がすごい勢いで上がっていく子
(私はこの子への共感が一番多かった…)

昨今はかなり人権を取り戻せてきつつあり、世間からの認識も、まだまだ誤解や偏見が多いものの受け入れられつつあるセクシャルマイノリティの要素も含めた作品です。
個人的には「セクマイ」と呼ぶのに抵抗があるのですが(少数派、と言われて褒め言葉と受け取る人は少ないんじゃないかなあ、変わってるみたいな受け取り方が多いんじゃないかなあ、という意味で)、この作品でも、「自分がマジョリティだと思い込んでいるだけでは?」と思わせるエピソードもありました。
セクシャリティはセパレートじゃなくグラデーションだよなあ、という。
それがマミちゃんだと思って読み終えました。

そこが大きな見どころ、というのではありません。
誰しもが、特にこの時期を通り過ぎてきた人には「ああ…」と遠い日を思い出して、ほろ苦いような、甘酸っぱいような、当時はどこか悟った気分で過ごしていたつもりだったけれど、存外今より一生懸命必死で生きてたなあ、と思い返すような感覚で読み終えた作品でした。

自分を過大評価して肥大していたプライドをへし折られたときの絶望感、どうせ何をやっても裏目に出るとやる前から諦めてしまう瞬間、周囲が勝手に自分のイメージ像を作り上げていて、それに沿おうとして疲れてしまう気持ち、嫉妬や妬み、繊細なメンタルの状態にあるこの時期のそんなときに、そこをそっと包んで温めてくれる優しさに、それまでの諸々が溢れてしまう瞬間…どれをとっても「ああ、あったなあ」「必死で自分を保とうと足掻いてたなあ」「そのままの自分を認められなくて、それを意識し過ぎてたなあ」と苦笑いが浮かんでしまうお話でした。

ひとつひとつのエピソードは、高校生活の日常で、あるあるな話で、でもだからこそ、クラスメイトや仲の良い友だち同士のやり取りひとつひとつに、ものすごく影響を受ける。
何気なく言われた一言に、とか。
ちょっとしたすれ違いで大ダメージを受けたり、とか。
そこから立ち直るのに、決して独りではどうにもできなくて、そんな自分が悔しくて嫌いになったり、とか。

太一と二葉の著しい成長が見どころの一つ。
それと、もし身近にいたら「いいなあ」と理想的で悩みなんて知らなそうなトーマや真澄の抱えている悩みが、この時期の子には本当に大問題なんだろうなあ、という切なさも、続刊を待ち遠しく思わせる展開でした。

そして個人的には、マミの主張が多くの人に届いたらいい、とすごく共感を覚えました。
「なんでも恋愛に結び付けんなっつうの」
みたいなセリフは「それな!」と激しくヘドバンしました…。
男女での友情が成り立たないなんて誰が決めたんだ、とか。
普通に話していても媚を売っているとか、気を持たせているなんてやっかみでいじめられたりとか。
自分も似たような年のころに似た経験をしたので、マミのブレなさと強さにものすごい尊敬の念と、決して戻ることができない過去を悔やんだりとかしてしまいました。苦笑

高校時代。
友だちがすごく大事で、彼らの一言、一挙手一投足に、ものすごい影響を受けたよなあ…と懐かしさを感じる話です。
そして、現役高校生にはリアルタイムで自分がその時間に身を置いているので、どこかしら励ましや希望やヒントになりそうな考え方の転換なども得られるのではないでしょうか。
今の中高生は私たち親世代以降が中高生だったときより、はるかに制約が多くて忙しくて、大変だと思います。
そんな中でも、一度しかないその時間を、こんなふうに一生懸命生きていけたら、大人になったとき私みたいな後悔は少なくなるんじゃないかな、なんて思わせてくれる作品でもありました。

ネタバレを伏せて「面白いよ!」を伝えるのって難しいですね…。
それをどう書き出せばいいのか悩んでいるうちに、読んだのは9月なのに10月がログインしてしまいました。笑
消費税が10%になってしまいましたが、まだ6巻までしか出てないので、買い集められる、まだなんとかなる…と祈りつつ、ひとりでも多くの人にこの作品を読んでもらえたらな、と思います。