本と映画と日常と

自分が読んだ本、鑑賞した映画と日常の徒然を書き留める備忘録ブログです。感想記事にはネタバレもありますので、各自の判断と責任のもと閲覧くださいませ。

【17.11.09.】『きみに読む物語』鑑賞

 

きみに読む物語 [Blu-ray]

きみに読む物語 [Blu-ray]

  • 発売日: 2013/12/03
  • メディア: Blu-ray
 

あらすじ:
とある療養施設にひとり暮らす初老の女性。
老いてこそいるがたたずまいも美しく過ごしている。
しかし、彼女は情熱に溢れた若い時代の想い出をすべて失ってしまっている。
そんな彼女のもとへ定期的に通う初老の男。
デュークと名乗るその男は、物語を少しずつ読み聞かせている。
語られるのは1940年代のアメリカ南部の小さな町の、きらめくような夏の物語―。

アルツハイマー症に侵された女性。
彼女は彼女を愛する一人の男の力によって病を克服する…。
ニコラス・スパークスの小説を原作とする奇跡の愛の物語。
amazon商品紹介より抜粋引用)

【ここからネタバレ感想です】

 

原題は『THE NOTEBOOK』。
鑑賞前に原題と邦題の両方を目にする形で見たのですが、そのとき、
「なぜ物語なのにStoryではなくNotebookなのだろう」
と思いながら観始めました。
鑑賞後、作品内容に対する感情の揺さぶりが落ち着いてから改めて原題と邦題を眺めていたら、とても腑に落ち、そのセンスに感嘆しました。
これは物語でありつつ、記録でもあるので「Notebook」。
そこに内包された、この物語をつづった人と物語を贈られた人の想いをくみ取った『きみに読む物語』という邦題。
「読む」行為に秘められたものは読み聞かせるデューク(=ノア)の想いに溢れているのがタイトルから感じられ、タイトルって本当に大事だな、と思いました…。

感覚派の人には感涙ものでしょうし、冷静に分析するタイプの人としては「そんなうまい話は…」と苦笑するかもしれない内容です。

私は、ラストについてだけは「理想だな」と思いましたが、それが解っていつつも涙が止まらなくて、久し振りに号泣するほどの感動作品となりました。

結局DVDを購入ポチリとし(笑)、原作と比べてみたくて文庫も購入。
また小説版の感想も書けるといいなあ、と思っていますが。

作品紹介では、「病を克服する」とありますが、私はそう解釈できませんでした。
現実ではそんな奇跡が起きないことを身をもって知っていますし、理想だな、と思うのですが、でも、ふとした瞬間に「帰ってくる」ことは、本当にあるんですよね…。
その一瞬の重さと尊さを感じさせるラストでした。
そこで「あり得ない奇跡」と知りつつ号泣してしまったのは、物語のこれまでの積み重ねによって、見るほうがアリーとノアそれぞれの想いをひしひしと感じているからだろうと思います。
一途なノアを絶賛する感想が多いのでしょうか?
(まだ他の方のレビューを覗いていません)
私は、ノアの想いに胸が痛むことももちろんあったのですが、
『親に自分の人生を定められていることが当たり前な環境ゆえに違和感を持てない』
『でもどこか息苦しさを感じている』
という、17歳のアリーにかなり共感を覚えました。
物語の大半で2人の恋の大きな障害という位置付けで登場していたアリーの母親ですが、彼女が若いころ、やはりアリーと同じように身分違いの恋をしたのを娘に打ち明けたときのシーンは様々な憶測を呼びました。
若いころ恋した労働者階級の「冴えないおじさん」を差し、かつて恋した人だと告げたとき、アリーの母親は遠い目をして彼を見つめます。
そして、アリーを諭すんです。
「私はお父さんと結婚したことを後悔していない」
「私はお父さんを愛している」
そう言うのに、アリーの母親は泣き崩れます。
私の目には、まるで彼女が言葉とは真逆の想いで泣いているように見えました。
その「冴えないおじさん」と目が合った直後、アリーのお母さんは逃げるように車を発進させて彼の働いている場所から遠ざかります。
そして、アリーに言うんです。
「後悔のない選択を」
その結果、アリーがノアの許ではなく婚約者のところへ帰る選択をしたシーンでは「ええええええ!?」と思いました。
思いましたが……あとはぜひ直接お確かめください。笑

主要人物だけでなく、私にとってはアリーの両親も際立った存在に映りました。
「いかに書かずに伝えるかを考える作家志望が今はとても少ない」
作家さんや編集さんのtweetで散見される言葉ですが、アリーの母親の描写を見て、こういうことかな、と思いました。
アリーの母親の葛藤は、一切台詞には出てきません。
これが小説版ではどう描写されているのか、またはされずに読者にどう伝えているのか、とても興味があります。

また、物語(=アリーの手書きの自叙伝)の読み手はノアなのですが、どこまでがアリーの手記で、どこからがノアの挿し込んだ彼の変わらぬ想いなのか、それもいろいろと想像を広げさせ、それによってノアの愛情深さをより感じてしまいます。

見ていてつらかったのは、一瞬「帰って」きたアリーがまた「行って」しまい、ノアをひどく恐れて激しく拒むシーン。
彼は娘や息子に「お願いだから(施設から家に)帰ってきて」と言われても、アリーの傍から離れないと言って、彼女と同じ施設で暮らしているのですが、こんな拒絶を何度味わっているのだろう、と思うと涙が止まらなくてどうしようかと…。
自分にも身に覚えのある経験だからか、そのシーンが辛過ぎて、一時停止。
大切な人に忘れられ、怯えられることが、そして本来のその人が実は本当に自分を愛してくれているのだと解っているだけに、愛にがんじがらめになってしまう苦しみを感じて、本当に、とても辛いシーンでした…。

70代に差し掛かるご老人たちの愛の囁きや愛情深いキスシーンは、見ているこちらをキュンとさせます。
そして、とても切ない思いにもさせます。
あんな純粋で気高くて綺麗なラブシーンは見たことない…。
(註:ラブシーン=濡れ場ではありません。笑)

アリーの忘却への恐れ、そうなったらどうなるのか、愛する人はどうするのだろう…そんな不安は、亡き祖母の見せたそれと重なり、また涙。
とても泣き疲れる作品でありました…。

と、感想を書ける状態になるまで随分時間がかかってしまいました。笑
一度観たきりなのですが、それでも細かいところまで覚えていられるくらい強烈な作品です。
物語の大半がリアリティを感じさせる内容だと思います(私が無知なだけかもしれませんが)
それだけに、ラストの理想的な終わり方が、むしろ理想的であるからこそ救われたというか…私の中ではハッピーエンドな物語だと思います。

2004年に向こうで公開開始、日本では翌2005年公開、という古い作品ですが、人気作なのでしょうか、再販していたので、衝動の赴くままにポチってしまうくらいには、感動した作品でした。
twitterのタイムラインでたまたま目にしたtweetのおかげで、本当によい作品と出会えたので感謝頻りです。
ここを見てくださっている映画クラスタさんがおられましたら、ぜひ、どんどんおススメ作品を呟いてやってください。
私が喜びます。笑