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自分が読んだ本、鑑賞した映画と日常の徒然を書き留める備忘録ブログです。感想記事にはネタバレもありますので、各自の判断と責任のもと閲覧くださいませ。

【11.07.08.】『とある魔術の禁書目録(インデックス)』感想

 

創約 とある魔術の禁書目録 (電撃文庫)

創約 とある魔術の禁書目録 (電撃文庫)

  • 作者:鎌池 和馬
  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: 文庫
 

あらすじ:
 舞台は架空学園都市。
 超能力が科学で解明され、一般科学として認知された世界で「無能力者(レベルゼロ)」というレッテルを張られた少年、上条当麻
 学園都市という名の“超能力者開発都市”の側面を持つこの都市の中に、外部侵入者があるなどありえないにも関わらず、ある日突然「インデックス」と名乗る、純白シスタースタイルの銀髪少女が、無能な当麻宅のベランダに(布団のように)引っ掛かっていた――。
 アンチ・オカルトの学園都市の中で繰り広げられる、すべての禁断魔術を記憶しているインデックスを狙う謎の組織と、彼女を守ろうとする無能少年の学園アクションストーリー(というあらすじで合っているのだろうか;)。





【ここから感想です】

 
 表紙折り返し部分のBOOKデータベースにある、当麻の「ありえねえ……」は、序盤読み始めに抱いた私の感想そのものでした。
 とにかくラノベを読み慣れていない私には、読みづらいことこの上なかったです。
 いわゆる「文芸」で珍重されるらしい文法作法が鮮烈なほど破綻;
 「……」「――」を一行丸々使う手法、ページの3分の1近く覆い尽くすほどの強調ルビ点の多さ、特殊読みによるルビが1ページの中で半分近く(禁書目録をインデックス、能力をスキル、などなどなど)といったようなビジュアル的文章や、「!?」表記の多さ、地の文にそのまま続けて綴られる心の声=会話文など、愚息の読了後の感想が
「誰が何言うてんのか解らへん;」
 というのを身を以てして知った、という印象でした。目がシバシバした…。

 解り易い例えで言うと、
「友達同士で漫画の話を語る時の説明口調っぽい地の文+漫画の噴き出しによく見られる口語の会話文」
 といった文章で、なかなか読み慣れてなくて物語に入り込むのがかなり難しく感じられました。

 今はこういう文章でないと、市場を支えている方々が難解文章で読めないと感じて敬遠するんだろうなぁ、という感覚で読んでしまいました。^^;
 私の中では「ライトノベル」というと上遠野さんだったわけですが、今のラノベ愛好者の一部が上遠野さんを低評価する理由が解る気がしました。

 時代って流れてる! みたいな(遠い目
「怖い」「哀しい」「怒り」など、記号としての感情を示す言葉はあるんですが、今ひとつ共感を覚えないのは、心情描写が少ないからだと思います。
 これは主軸がアクションだから、なのでしょうか?←よく解ってない
 ドライな今の若い子が好む、ライトでクリスピーな、重苦しさのない軽い人間模様だなぁ、と感じました。

 フェイクに次ぐフェイク、というそれぞれの人物の内に秘めた「本当の気持ち」がなかなかどうして、すごく面白かったです(趣深い、とい意味で)。
 現代の若者の思考回路を物凄く明確にしているキャラたちだと思いました。
 諦めたくない自分=当麻
 現実を認識している大人びた醒めた目で物事を捉えている自分=マグヌス
 諦めているけれど、諦めない誰かに背中を押される自分=神裂
 今目の前にあることを一生懸命こなして頑張る理想的な自分=インデックス
 その時々の自分によって、誰の視点になって読むか、という感じで何度読んでも飽きない作品ではないか、と思います。
 美琴ちゃんもなかなかいいキャラなのに、序盤で活躍しただけで、以降すっかり登場しなくなってしまいましたね;
 現段階では1巻のみ読了。1冊完結のつもりが人気が出たのでシリーズ化されたとのことで、一応1本モノとして読んだ時、美琴ちゃんが勿体無いなぁ、と思ってしまいました。

 とにかく設定がハンパなく面白い。
 イロイロ(当然ながら)調べてらっしゃるので、インデックスの事情というのも、妙にリアリティを感じたりします。
 言葉の端々に、風刺、というと大袈裟かも知れませんが、
「宗教に政治を混ぜたのが分裂の原因」
 とか、
「同じ目的の人が、みんな仲よくなれたら戦争なんてないよね」
 とか、私なんぞはいいオバサンなので、その部分を膨らませてそこに強いメッセージをこめた作品にして欲しかった! と思うくらい、着眼点がカッコよかったです。

 グロスでバランス持論の私は、インデックスに「置き去りにされる者の気持ち」というのも解って欲しいかな、と思ったので、このラストが若者向けとしては最良だと思いつつ(でないとカタルシスが得られないんでしょう;)、結局彼女はたくさんの人から心をもらいっぱなしなのかー、と――なんかちょっと消化不良;
 散々「不幸! 俺って不幸!」と言ってばかりいた当麻クンですが、基本実はポジティブな子なんだろうな、と透明になってからの彼を見て、なかなかカワイイヤツだ、と初めて思いました。

 どうでもいいことをふと思ったんですが。

 マグヌス「見た目は14歳」設定っぽいんですよね。だけどフツーに喫煙してるんですよ。
 都の青少年育成条例のあやふやさにちょっと憤慨。
 この作品を、反社会行為を容認すると受け取れる描写があるから取り締まれという意味ではなく、真逆の意味合いでムゥッ;
 ある意味異世界、というかパラレルワールドだから無問題、なのでしょうかね?
 それ言っちゃうと、日本刀を街中で堂々ぶら下げている神裂ちゃんも余裕で捕まっちゃいますね(笑

 全体として感じられたのは、作者はあのラストを書きたいが為に綴り続けた、という印象。
 最終章には心動かされました。ああ、こう感じさせたくて、これまでを綴って来たのかな、みたいな。

 総論は、「若人よ、もっとイロイロ足掻こうぜ」みたいな感じのお話でした。
 一応続編既刊全巻読むつもりですが、巧く感想を綴れる自信がありませんので、以降続刊の感想は割愛させて戴きます;
(何しろ文体の違和感がすぐ現実に引き戻してくれちゃうので、難しいです;)
 プロさまでもフツウに「「 」」っていう表記を使うのですね。←物凄くビックリした;