本と映画と日常と

自分が読んだ本、鑑賞した映画と日常の徒然を書き留める備忘録ブログです。感想記事にはネタバレもありますので、各自の判断と責任のもと閲覧くださいませ。

【09.12.05.】『さまよう刃』感想

 

さまよう刃 (角川文庫)

さまよう刃 (角川文庫)

  • 作者:東野 圭吾
  • 発売日: 2008/05/24
  • メディア: 文庫
 

あらすじ:
 未成年の少年3人が薬物を使って一人の少女を拉致・強姦の末死なせてしまう事件が起きた。
 少女の父親・長峰のところへ一本の電話が掛かって来る。
『これは悪戯じゃありません。長峰絵摩さんを殺した犯人はスガノカイジとトモザキアツヤです』
 警察へそれを伝えようとした長峰の手が、止まる。
“もし犯人が未成年だったら?”
“酒を飲んでいたら?”
覚せい剤をしていたら?”
“精神に異常を来たしていたら?”
 長峰は通報の為にあげた受話器を下ろして「行動」をし始める。

 ふたつの事件をとおして、「正義とは何か」「法とは何か」を加害者・被害者・捜査する刑事たちの視点で考えさせられる物語です。





【ここから感想です】

 


読後の何ともいえない後味の悪さは、意図してのことではないかと思わせます。
 そのために、読後いつまでも考えさせられる。
「法って何だろう。誰の為の法律なんだろう」
 とか、
「正義っていうのは所詮主観なのかも知れない」
 という何処か諦観してしまう自分を必死になって
「諦めたら終わりだろー!!」
 と言い聞かせたりとか、本当にいろいろ考えさせられました。

 …と言いつつ、『考える』ことが出来たのは、読了後随分時間を置いてから。
 生まれて初めて、読書中の本を途中で閉じました。
 そのくらい、強烈な内容です。決してグロとかRという意味合いではなく。
 かなりメンタルやられました。
 主人公の一人、長峰の気持ちは、若い世代の人達にはきっと理解出来ないだろうと思います。
 かく言う自分も、所詮は想像の域を出ないのでしょうが、それでも読み進めることが出来なくなる程、精神的にヤられました。

 感情の部分では、娘さんを持つ親御さんにはあまり読んで欲しくない、と思わせてしまう作品です。
 娘さんを、家、という鳥かごにずっと入れておきたくなるのではないかな、と。
 少なくても、自分はそう思いました。

 理性、というか思考の部分では、少しでも多くの人に読んでいただき、老若男女問わず、危機意識というものと、
【無関心という名の罪】
 ということについてご一考いただけたら、なんて思う作品なのですけどね。

 寺尾聰さん主演で映画化されていますよね。
 彼の演技が好きなので、絶対観たいと思っていたのですが、彼の名演を知るだけに、受けるダメージを考えると…観たいけれど観るのが怖い、というのが本音です。