本と映画と日常と

自分が読んだ本、鑑賞した映画と日常の徒然を書き留める備忘録ブログです。感想記事にはネタバレもありますので、各自の判断と責任のもと閲覧くださいませ。

【11.02.08.】『ぼくのエリ 200歳の少女』鑑賞

 

ぼくのエリ 200歳の少女 [Blu-ray]

ぼくのエリ 200歳の少女 [Blu-ray]

  • 発売日: 2014/03/26
  • メディア: Blu-ray
 

あらすじ:
 いじめられっこで繊細な12歳の少年オスカー。
 友達が欲しいという孤独な少年の願いは、同じ12歳のエリが父親と共に隣の家に越してきた事で、とうとう
叶えられそうだ。
 しかし青ざめた顔をした少女の外出は夜だけ。
 キャンディも食べられない。
 そしてエリが現れた頃と時を同じくして、街では不可解な失踪や殺人が次々と起きはじめる…。

 恐ろしい話が大好きで内向的なオスカーはエリがヴァンパイアだと気付く。
 12歳の体に永遠の命を閉じ込められたまま生きるエリは、常に旅をし続けなければならない。
 ふたりの幼い恋が終わるかに見えた時、オスカーに最大の悲劇が襲いかかる。
 エリは彼女が出来る唯一の方法で彼を守るため、戻ってくる…
amazon.co.jpより)





【ここから感想です】

 

 友達のお薦めとのことでこの作品を知りました。
 ネタバレ過多なので、内容を知りたくない方は読まれない方が賢明です;

 ※ ※ ※ ※ ※

 主な登場人物は、
・オスカー:
 いじめられっこで内向的、心の中では苛めっ子達を殺してやりたいと思っている主人公。
 猟奇事件や怪奇事件の新聞記事をスクラップするのが趣味。
・エリ:
 オスカーが初めて恋したヴァンパイアの女の子(実は200歳生きている)。
 血以外を身体が受け付けない。
 けれどオスカーの勧めたキャンディをひとつぶ頬張る優しい子←Kaname主観;
・ホーカン:
 映画では名前が出て来ない。エリの父親として一緒に暮らす男性。
 エリの為に殺人を犯し、血を集めて彼女を養っている。
・街の人々:
 オスカーの暮らす田舎町にいるどこか陽気で楽天的な人々。日常/平和平穏の象徴みたいに受け取れた。←主観
・オスカーの母:
 決してオスカーを疎んではいないが、どこか節穴な目をしているお母さん。
 息子がいじめに遭っていることも知らないし、離婚した父親にオスカーが会いに行く予定にしている何日か前、愛人らしき人に「仕方がないでしょう」とか「父親と会う日だから」とか報告している。
 これは憶測かも知れないっす; ひょっとするとオスカー母のお母さんに愚痴ってるだけかも知れない;
・オスカーの父:
 決してオスカーを疎んでいる訳ではないが、息子が月に一度(かな?)会いに来た特別な日でも、息子より自分を優先してしまうガキんちょ親父。
 突然訪ねて来た「友達」という男性とガチホモ関係なんじゃねぇのか、だからオスカー母と離婚したんじゃないか、とエスパーしながら見ていた次第。
 だって、父友人、やらしい目でオスカー見るんだもん。(´;ω;`)
 オスカー父、邪魔そうな目をしてオスカーのことを目を細めて見るんだもん。(´;ω;`)
 そりゃ「お邪魔なのか」と夜中でも飛び出したくなるよなぁ、と……。(TωT)
・ガッコの苛めっ子達:
 名前は覚えられなかったな;
 オスカーの反撃にあって聴覚障害になった子が苛めの首謀者。
 この兄貴も弟の復讐とか言いつつ憂さ晴らししたかっただけじゃねぇの、と思う程むかつくやつだったな。
 だまし討ちに加担したヒョロい子は、典型的な日和見主義で今の日本におけるいじめの傍観者的立場とラップした。
 ただひたすら傍観しつつ、加担する度胸もなければやめようよという勇気もない子がいたけど、その子は最後まで傍観し続け泣き続けてたな;

 ……と、感想混じりの登場人物紹介でした、長過ぎますね、以後自重(出来るのか?;


 先般「200年生きていて心が12歳のままという部分がどうかと思う」みたいなレビューを見たけど云々、なんて話をしたかと思うんですけれど。
 私はそういう印象を受けませんでした。

 生きる為に必要なことをなんでもして生き延びる。

 そういう生存本能のままに、生きる為に必死で生きているのがエリ、だと思いました。

 哀しいくらいに強くて逞しくて、だけど何度味わっても慣れることがない、そういう歴史を彼女は繰り返して来たんじゃないかと思わせる。

 透きとおる蒼い瞳と黒髪が、エリという影の象徴。
 雪に溶けてしまいそうな真っ白な肌と黄金の髪が、オスカーという光の象徴。

 そんな風に見えるくらい、オスカーは理不尽ないじめへの憎悪も仕打ちに対する恐怖もエリに対する恋心も、純粋で赤裸々で幼くて。
 物凄く母性本能をくすぐる子、だったように思います。
 エリは少女の心のまんまではなくて、大人の心だったんじゃないかな、と。

 再三出て来るエリの言葉。
「私は女の子じゃない。それでも好きだと思えるの?」
 原作を読んでいないので憶測ですが、彼女が着替えるシーンで、そっと覗いてしまったオスカーがはっとして覗きをやめるシーンがあります。モザイク処理で具体的には当然わかりませんが、レビュアーさんの中には「去勢されて性を封印された」と解釈した人もあるようです。
 両性具有、という解釈は私もした、かな。
 虚勢とか性を封印とかまでは想像が至りませんでしたけど。
「それでもいいよ」
 と何度も答えるオスカーが心からそう言えたのは、父と父友人の艶かしい視線のやり取りで「そういう」のにも抵抗がない、と解釈すると、アリかなと思ったり。
 常識的な価値観ぜんぶを取り払って、魂を愛してる、みたいなピュアさが哀しくて、どうしようもなくなるラストです。(TωT)

 ヴァンパイア、つまり人を殺して生きていくエリに対し、それを知ったオスカーは彼女のことを拒みます。
 それはもう、意地悪な形で。
 エリは誰かのテレトリーへ入る時、「許可」がないとダメみたいです。
 彼女が意を決してオスカーの家を訪ねるんですが、彼は決して「入っていいよ」と言ってはくれません。
 無言で「入りたければ入れば?」みたいな態度をして顎で彼女を促します。
 禁則を破った場合、自分がどうなるのかエリは知っているはずなのに、彼女はオスカーの自宅に足を踏み入れるのです。
 彼女の身体から血が滲み出て来た瞬間、見ているこちら側も「どうなるか」を知るのです、オスカーと一緒に。
「入っていいよ!」
 オスカーはエリを抱き締めて慌ててそう言うんです。
 私はこのシーンが最初にガツンと来た場面でした。(TωT)
 エリが切々と訴えるのです。
「私を受け容れて」
 それは変な意味ではなくて。
 劇場版にはあった台詞ですが、DVDではカットされていたような;
「好きでこんな身体に生まれたわけじゃないわ」
 予告編で見たこの言葉が、何より一番私が引っ掛かっていた言葉なんですよね……。
 自分がもしオスカーならこうしてる、と思っている選択を彼がしてくれたので、なんとも言えない気分になりました。

 そんな恋愛主軸の物語の一方で、不可解な事件というサスペンスな一面も描かれていくのがこの作品。
 映画では名前の出て来なかったホーカンですが、彼という存在が、彼の死後も見る側の中で生き続けている作品と感じます。
 原作では性倒錯者という人物像で描かれているらしいのですが、映画ではただひたすらに、純愛。
 きっと、彼もまた少年時代にエリと恋におちて、ずっとふたりだけで生きて来たのではないか、と。

 オスカーと親しくなり始めたエリに、彼は切なげな瞳で、だけど短い言葉で懇願します。
「お願いがある。今日はあの少年と会わないでくれ」
 これもまた、映画の予告編ではあったのにDVDでカットされちゃったらしい台詞があって。
「彼は危険だ」
 という台詞。
 一連の流れを見ていないので憶測の域を出ませんが、エリにとって危険と言いつつ、実はホーカンにとって危険だと感じていたんじゃないかな、と。

 嫉妬。

 という奴ではないかと。

 今日だけは、と言ったのは、その日はエリの「食事」を確保する為、ホーカンが出掛ける日だったから。

 オスカーの住む街に引っ越して来てから、ホーカンは「食料」の調達に失敗しています。
 エリになじられて「すまない」と哀しげに詫びる姿は、彼にとってエリがどういう存在なのかを序盤で知らせていたので切なかった。
 長い歳月は恋心を惰性の情へと退化させ、彼女の為の殺人は最早日常と化してしまっていて。
 それでもホーカンは最後までエリを守るんですね。
 二度目の失敗で、人に発見されそうになります。
「エリ、お前を守る為に」
 彼は罪を犯す時、常時持ち歩いている硫酸を顔にかけて警察が自分の身元を追えないよう隠蔽します。
 きっとエリとホーカンの間で、決められていたことなんでしょう。
 そして普通の人と同じように大人になっていったのであろうホーカンは、今の自分がエリにとってどういう立場なのかを解ってしまっているのです。
 エリを守ってくれるかも知れない子が出来た。
 自分は年を重ねてしまった。いつまでエリを守れるか解らない。
 警察が騒ぎ始めた。不可解な事件で終わらせることができなくなって来た。
 しくじることが増えてきた。
 自分はエリにとって、お荷物になって来始めた――。
 その決断は、ホーカンよりも、エリの方が苦しいものだったんじゃないかと思います。
 彼が硫酸をケースへ詰めながら
「万が一の時の為にはこれを使うよ」
 と言った言葉に対し、彼女は
「使わないで」
 と背を向けて言ったのです。(TωT)
 ホーカンの逮捕後、輸送された病院へエリは裸足で赴きます。
「入っていい?」
 病院の窓からノックする。ホーカンはダメだという。きっとエリの痕跡を残してしまうから、と考えたのではないかと思うのです。
 彼は窓を開けて、自分が身を乗り出します。エリがその喉笛を咬む。ホーカンの身が更に窓からずり落ちていく。何十メートルもあろうと思われる高さから、彼の身体は落下し、途中の突き出した屋根で首がぶつかり損傷してから地面に落ちる。砕けた肉塊では、歯形など見い出せない、自殺と判断されるだろう……とでも思ったのだろうか、と思いながら、メソメソして見てました;

 そんなホーカンを見て来たので、最後にオスカーの選んだ道は、そのままホーカンと同じではないかと胸が苦しくなるのです。
 それを笑って受け容れるオスカー。
 楽しげに二人で箱越しにモールス信号で会話する。
 純粋で惨酷で哀しくて寂しくて、誰にも理解されない者同士の、哀しい結末が待っているとしか思えないエンディング。
 だけど、バッドエンドとは思わせないのです。
 哀しいくらいに「よかったね」と思えてしまって……号泣。

 誰も理解してくれないことを、たった独り理解してくれる。
 それは掛け替えのない存在で。
 ただ彼女の為に生きたい。
 やり過ごすしかないと思っていた色褪せた毎日が、例えそれが紅一色だとしても鮮やかなのは確かな訳で。
 彼女は罪を犯しているのではない。生きる為にやむを得ない。
 いちいち心を痛めたところで、彼女を理解する人はいない。
 その一方で理解してくれる人には、決して食らいつくことなどしない。
 だからホーカンはヴァンパイアにならずに済んだと思うんです。

 押し付ける持論めいたものが何ひとつない作品です。
 ただただ、白銀の世界に彼らの純粋な愛情を感じる。
 一面の白を染める血の紅が、生きるということの厳しさと美しさ、厳しく苦しいからこそ、瞬くものの大切さを貴重なものではないかと思わせる何かを淡々と訴えて来る。

「逃げないで」

 エリの言葉が突き刺さります。
 彼女は逃げたくても逃げられないものを長い時間背負い続け、これからもいつまで続くか解らないまま、やっぱり背負い続けていく訳で。
 そんな彼女に「逃げないで」と言われたら、あんな瞳にまっすぐ覗きこまれて言われてしまえば逃げるわけにはいきません…っ

 大人で子供な12歳。エリはそんな子でした。
 オスカーに感情移入していたかも。それと、ホーカンに。
 エリが魅力的でした、それはもう悪魔的なミリョク。

 血が苦手な方にはお薦めしません;
 スプラッタみたいな派手な演出って、逆にフィクションくさくて笑ってみれる(これ私の主観です;)けど、この作品で流れる血は、リアルです;

 今度原作を読んでみよう。物凄く惹かれる作品でした。
 違いを見てみたい。


 あと蛇足話ですが。
 本編前に入るほか作品の宣伝を見て、見たい作品が一気に増えた(笑

エンター・ザ・ボイド
 サイケ&セックス、ノワールな世界に兄妹。舞台はTOKYO。
 ノワールな世界観を描けないので、勉強的意味合いで観てみたいです☆

【闇の列車・光の旅】
 ホンジュラスからアメリカへ逃亡を謀る少女と、そんな移民を襲う強盗団に属している少年の話。
 当たり前のことが当たり前じゃない、そう思わせる作品らしいby夏木マリ(笑
 ホンジュラス……好きなコーヒー豆の銘柄(は?;
 これもまた恋愛がらみのお話なので、観てみたいのであります!!><

シングルマン
 んー……これもびーえる臭い話、なのかな;
 女性と男性と男性と男性と、どろどろ人間関係っぽい話に見えるんですが;
 マイノリティの苦悩葛藤、みたいな話っぽいので観てみたい、と;

【ミックマック】
 うぉー! デリカテッセンの監督の人だ!
 と思わず速攻メモメモでした(笑
 なんだろ、ティム・バートン作品の彩度を上げたような作風なんですよね、この監督の作品って。
 独特な映像が映像フェチには堪らなくv
 久々にシュールな映像を楽しみたくてレンタル候補♪


 レビューというより備忘録になっちゃった;
 そんなこんなのダラダラ感想文でした;